家庭菜園と鬱病
某アーティストが家庭菜園をすればウツが治る(軽くなる?)と発言して話題になった事があったが、それは本当だと思う。しかしある部分では間違っている。 野菜を作ると単純にフィジカルの面で健康になる。日光を浴びたり汗かいたり…そして美味しい野菜を食べれる。そして精神も豊かになる。種まきから水やり、間引きや剪定、これらは、育てる喜ぶを得られる。精神科医のフリッツ・パールズは「生きること」は「創ること」と言った。逆を言えば創ってなければ生きていない、とも言える。受動的に消費ばかりしている現代人は創る行為をしてはいない。そんな現代人に野菜作りは生きている実感を与えてくれる最高の趣味かも知れない。創造性という言葉で真っ先に連想するのは音楽や絵画だが野菜作りも立派な創造的行為、つまり芸術なのだ。 しかし、思考の癖によってウツになっている人には、家庭菜園で肉体的に健康になれても思考の癖は変えられない。思考は肉体よりも精妙だから、筋トレの様に簡単にはいかない。非常に辛抱強く己の思考と向き合う必要がある。コップに入った水を見て、どういうふうに受け取るかは人それぞれだ。悲観的な見方をする思考の癖がある人が、肉体的に健康になってもウツ的な傾向は治らないだろう。だから家庭菜園でウツが治る人もいれば治らない人も居る、と言うのが正しい。そもそも、「これさえすれば全てが解決する」といった思考が既にウツ的な思考である…とも言える。この2元世界にマスターキーなど無いのだ。 単純に家庭菜園は面白いから、ハマる人はハマる。家庭菜園をやると肥料や堆肥作りにも興味を持つだろう。自分はそこからミミズコンポストを始めた口だ。ミミズコンポストと家庭菜園はきっと死ぬまでやり続けるだろう。 この世界に存在する物事にハマるというのは、その対象を好きになっているということだ。何かに没頭している状態というのは、己が落ちて、対象と一つになっている状態と言える。その時、己という自我に付随している不安や苦悩も消え去る。だから、人間は恋愛がしたいし、夢や目標を立てて文字通り夢中になりたいのかも知れない。